救世主・ドラム式洗濯機
うちの洗濯機はドラム式だ。日立の2017年モデルは翌年に型落ちとなり、値切りを経て我が家に設置された。16万円だった。述懐めいた文面だがまったくの現役で、壊れるような予兆はおろか、洗濯乾燥どちらも3年の経過を感じさせない。
乾燥が上手い洗濯機は素晴らしい。特に僕のような服に重きを置かない人間からすると、大抵の服を洗乾コースで突っ込めばいい感じになるのは快適この上ない。
「大抵」に含まれない一部の服は、残念ながらそうはいかない。一般にデリケートな服は加熱で縮むし、チノパンのような長ズボンはしばしば折り目だらけの状態で仕上がる。こういう服の扱いは実に面倒だ。面倒だが洗濯は避けられない。洗濯は避けられないが面倒。そういう服は、必然的に片手で数えるほどに収まる。
たぬきちアロハ
その「面倒な服クラブ」に、最近ある服が仲間入りした。たぬきちアロハである。
生地の柄、フェルトでできた胸ポケットのワッペン、さりげなく目を引く Nintendo TOKYO のロゴタグなど、所有欲も着用時の充足感も格別なアイテムだ。レーヨン100%の生地は肌触りに大変優れ、アロハを名乗るのに十分な質感を与えている。たぬきちアロハを模した服は、『あつまれどうぶつの森』発売直後から流行に敏感な AliExpress の業者が販売していた。微妙な品質どころかそもそも公式許諾を得ていないそれらを抜き去るクオリティに、僕は興奮し躊躇なく購入した。
レーヨンは、一般に縮みやすい。ビジュアルが重要な服なので、極力丁寧な洗濯をしたい。面倒な服は増やしたくないが、それ以上にこれを着て至福に包まれたいという気持ちが勝り、丁寧な洗濯を試みることにした。
洗濯表示
丁寧な洗濯のためにはタグを確認しなければならない。絶望的に洗濯が面倒そうな以下のマークについて、左上から解説する。
アイコン | 意味 | 感想 |
---|---|---|
桶に手 | 液温は40度を限度とし、手洗いができる | は? |
三角にバツ | 塩素系及び酸素系漂白剤の使用禁止 | 襟汚れとかどうすんの? |
四角・丸・バツ | タンブラー乾燥禁止 | わかる |
四角・縦棒・カドに三角 | 日陰の吊り干しがよい | わかる |
アイロンと点1つ | 110度を限度としてスチームなしアイロン可 | スチームだめとかあるの |
丸にバツ | ドライクリーニング禁止 | 溶剤だしまあ… |
丸・W・バツ | ウエットクリーニング禁止 | どないしてクリーニングせえっちゅうねん |
手洗い(絶望)
手洗い?そんなの無茶だ。洗濯に費やす時間がトップレベルで嫌いな僕にとっては悪夢でしかない。なんとかならないかと洗濯機を眺めたところ、「おしゃれ着」というメニューがあった。ぶっつけ本番で実際に回してみたところ、洗浄も脱水も長くなる代わりに動きが弱い。なるほどこれなら大丈夫そうだ。偏りの多い手動の洗濯より、機械化されまんべんなく行われる操作の方がよほどクオリティは高いはずなので、そのまま任せることにした。
漂白剤禁止
次に辛いのが漂白剤禁止マークだ。汗かき人間と襟汚れは切っても切り離せない。結局、これはガン無視した。「おしゃれ着に使える酸素系漂白剤」という概念が一体何のためにあるのか知っているのだろうか(文句)
アイロン使用可
アイロンが使えるのは助かった。点1つが低温を意味するのは知っていたが、スチーム禁止も意味するのは初耳だった。訝しみながらアイロンをかけてみると、なるほど思ったよりはシワがのびる。アイロンがけをミスるとテカりがちなのは素材に関係なく共通なので、あて布の併用も良いかもしれない。
クリーニング禁止
これを受け取ったクリーニング屋さんは一体どうやってクリーニングするんだろうか。ご家庭での手洗いはできても、(素人の洗濯よりか丁寧な)ウエットクリーニングは不可。どう考えても矛盾している。
お金持ちのある恩師曰く、ウン十万円の服をクリーニングに出すと高級品マークが付けられるらしいので、ヤバい服はヤバい服なりの洗濯方法があるのかもしれない。
洗濯決行
一通りの理解と勇気あるルール破りを経て、ようやく納得して洗濯に進んだ。
気付いたら2着になってた
— Takumi Sueda (@puhitaku) 2021年6月25日
深刻な送風機不足により干し方が意味不明 pic.twitter.com/08EkqE2eHR
汗をかいたので、襟にワイドハイター(酸素系漂白剤)を付けた。新品の服にそこまでやる必要ないだろとは思われそうだけれど…。むしろ、襟用にベチョベチョ付ける洗剤でも良いだろう。洗濯機は洗濯のみでおしゃれ着コース。完了とともにちょっと良い立体形状のハンガーにかけ、パンパンと伸ばし、襟の形を整えた。手動もしくは自重でのびるシワには限界があるので、あまり無理には伸ばさなかった。
アイロンは、低温設定でもそのまま押さえつけると縫い目の上でテカりが出かけていたので、あて布をしてかけたほうが良いだろう。ところで、スチームは使えないが霧吹きだと行けないのかなとは思った。多分スチーム禁止はスチームが100度を超えうる*1ことに問題があるはずだからだ。なお、アイロンは着る直前までやらない主義なのでアイロンに関しては購入直後の回想になる。
乾燥(感想)
乾いた姿はハンガーにかかった時とそう変わらない。上の方は襟を除き自重でシワが伸びているようだが、下の隅の方は力がかからないのでシワがある。着る前にアイロンが必要だろう。
手軽な洗濯を至上とする人でも、愛着の湧く服であれば丁寧な洗濯のやる気が出ることを初めて体験した。いや、日頃着ているTシャツでも愛着のある服は多いが、適当に洗乾コースで仕上げても問題がないので気にならなかっただけだ。人がどこに行動の重きを置くかについて、ちょっと考える夜の洗濯となった。
参考
*1:理科の実験で教科書に載っているように、気体の水は物を焦がすレベルまでバーナーで加熱できる